果樹園の柿の木の下に集まってお弁当を食べていると、年々少のYくんが言いました。
「この木も柿、この木も柿。なのに、どうして柿が無いの?」
上を見上げると、赤や黄色に色づき始めた葉っぱばかりで、たしかに柿の実は見当たりません。
「お猿さんが食べちゃったかねぇ?」「柵で囲ったら良いんじゃない?」みんなでワイワイガヤガヤしていると、
突然、年少のJくんが「あ!1個なってる!!」と指差しました。
「どこどこ?」「あれあれ!」「ほんとだ」「あった」
言われてみれば、全員に見える所に1個だけなっています。でも、斜面の縁に立っている木の張り出した枝の先、大人にだって届きません。
「ジャンプすれば良いんじゃない?」「抱っこしたら?」「肩車したら?」
「網を投げたら?」知恵をしぼる年少Yちゃん。
「網を長い棒の先にくっつけて…」アイディアが広がるJくん。
大人が「渋柿かもよ?」と水を差しても、「丸いから甘柿よ!」と一歩も引きません。
高枝ばさみの案や、地域の人に取りに来てもらう案も出ましたが、お弁当が終わると、みんな手頃な木の枝を拾っては、手を伸ばし始めました。
もっともっと長い枝が要るね…とうとうJくんが2メートルはありそうな大きな枝を引きずって来ました。1人ではとても扱えない重さ、みんなで大枝に取り付きます。大人は手を添えただけですが、力持ちの年少Tくんがぐっと持ち上げて、大枝が安定しました。先頭は年中Iちゃん、しっかり柿を狙って前へ踏み出す!
あれ?大枝の先に付いている小枝が、柿の実の手前の枝に引っかかっています。
みんな1回下がって〜ドヤドヤと大枝を地面に下ろして小枝の周りに集まり、パキッポキッ。手では折れない枝も体重をかけてバキッ、みじかく折れ残った所がちょうど良い二股になりました。さぁ、もう1回!
今度は届きました!しかし、柿の実は揺れるばかり。大人が見かねて「ねじろうか」「枝をこっち向きに回して」と声をかけ、大枝をわずかにひねった瞬間、柿の実は音もなく枝を離れました。
みんなが慌てて斜面の下をのぞき込むと、下から見守っていた大人が、さらに下へと転がり落ちそうな柿を足で止めてくれていました。
「やったー」「とれたー」「力を合わせたらとれたー」
駆け寄って手にとってみると、木の上にあったときよりずっと大きくてオレンジ色でピカピカです。思わず頬ずりしたJくん、みんなが代わる代わる頬ずりしている間ずっと「♪カキカキカキ〜」と自作の喜びの歌を歌っていました。
山下さんちに帰ったら、みんなで食べようねと話していると、「Yは食べない」とYくん。「食べたくない人は食べなくて大丈夫。食べたくなったら教えてね。」と答えました。
それからまた思い思いにひとしきり遊んで区切りがついたので、ちょっと早めに帰ることにしました。「柿はJくんのリュックに入れて行く!」とウキウキのJくん、「Yは食べないよ」と念押しするYくんです。
山下さんちでJくんが洗ってくれた柿を受け取って、くるくるとヘビのように皮を剥き始めると、興味津々のYくんが「やっぱりちょっとなめてみたい」と言ったので、1人1切れずつに切り分けてすっかりひと口サイズになった柿を渡してみました。みんなが美味しい美味しいと食べるの見ておそるおそる端をかじり「おいしい!」とニッコニコ。食わず嫌いだったかな?美味しくてよかったね!!
ちなみに子どもたちには皮も大人気で、あっという間にガジガジ食べられてしまいました。1個だけ入っていた種は、Iちゃんが花壇に埋めました。
Comments